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健康コラム

2015年10月 9日 金曜日

新しい糖尿病治療薬のおはなし

新しい糖尿病治療薬の登場

 2014年4月より、新しい作用機序の糖尿病内服薬が発売されました。
 糖尿病で高血糖になりますと、健康人では出現しない尿糖が、腎より排泄されて尿糖陽性となります。長きにわたり尿糖の陰性化、血糖の正常化が糖尿病治療の目標でしたが、新しい薬は腎に作用し、血糖の高低にかかわらず尿に糖を排出させて血糖値を低下させ、糖尿病のコントロールを改善させる薬です。
 これまでの内服糖尿病薬は、①膵に作用してインスリン分泌を刺激するもの、②インスリンの作用を増強するもの、③肝臓からの糖の放出を抑制するもの、④腸からの糖の吸収を遅くするもの、さらには⑤腸から分泌されインスリン分泌を増幅する物質の活性を高めるものなどですが、新たに尿糖排泄促進剤(SGLT2阻害剤)が加わりました。
 本薬剤の投与により約300キロカロリーの尿糖を排泄しますので、3か月くらいで3kgの体重の減少を来しますが、作用部位が腎臓ですので、腎機能の低下した方には効果が出ません。また尿糖が出続くために、糖尿病の方に多い尿路感染症の頻度が増加することが知られています。尿糖の増加は多尿傾向を来す結果、血圧もやや低下させることや、場合によっては、脳卒中や心筋梗塞などを来す可能性も示唆されるため、十分な水分摂取が重要です。したがって高齢の方には勧められません。
 しかしながら欧米では、その明らかな血糖低下効果や、体重減少などにより、大変多くの方が使用されています。
 さらに最近の臨床研究(平成27年9月)では、本薬の使用群で、心血管病変の発生が低下したとの報告があり注目されています。
 血糖降下薬も複雑になりましたが、それぞれの方の糖尿病の病態に則した使用が前提となりますので、主治医とよく相談されて適切に使用されることが必須と考えられます。

投稿
村上内科 院長 村上啓治

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