• TOP
  • 須磨区医師会について
  • 検診・健診
  • 予防接種

健康コラム

2015年3月17日 火曜日

おしっこの悩み あれこれ 

おしっこのお悩みあれこれ
          ~日常外来会話から~

 泌尿器科疾患の病気については病名ごとに詳しく記載した文献やコラムがすでにたくさんありますので、今回は日頃皆さんより外来でお聞きする内容から気がついた点をいくつかお話してみます。

・『来る前にオシッコしたところや』『さっき駅の便所でしたばかりですわ』
初診の方に時々いらっしゃるのですが、この場合、採尿できるまで余計に長時間待っていただく事があります。この後も再々出てきますが、泌尿器科外来診療では尿検査と残尿測定が診断の基本中の基本の材料です。受診時、最初に採取していただくオシッコからテープ定性検査・顕微鏡検査がすぐできます。これにより尿蛋白・尿糖・出血・感染の有無、場合により腫瘍細胞や結石の可能性などさまざまな情報がつまっています。だから皆さんが泌尿器科に受診される時は最低1時間オシッコを我慢して受診して下さい。

・『夜中、何回もトイレに行くんですわ』『昼間1~2時間しか我慢ができません、ひどい時はさっきトイレに行ったのに30分も持たずまたすぐ行くんやけど』
 最近テレビのCM・雑誌などで「過活動膀胱」という単語をよく耳にされると思います。「過活動膀胱」の場合、膀胱の過収縮を弱める薬を内服することによってかなり改善する事が多いです。ただ「頻尿」=「過活動膀胱」ではありません。「オシッコをしたいと思ったらトイレまで待ったなしや」とか「トイレまで間に合わず漏れる事もある」という時はまず「過活動膀胱」の典型的な状態と考えていいと思いますが、頻尿の原因が膀胱炎に起因する場合や残尿多量に起因する場合や心因性の場合もあります。膀胱炎原因の場合は抗菌剤投与によって原因菌を殺菌してしまえば頻尿は劇的に改善しますし、残尿多量が原因のときに「過活動膀胱」に使う膀胱の過収縮を弱める薬を投与するとさらに排尿困難・残尿・頻尿が悪化し最悪の場合尿閉(膀胱がパンパンになりオシッコが出ない状態)になる事もあります。この場合は膀胱の出口(括約筋)を排尿時弛緩させる薬が第一選択薬となります。
したがって最初にお話ししましたように、尿検査と残尿測定は頻尿の原因を鑑別するためにも重要な検査となります。尿検査はカップで採尿するだけですし、残尿測定も昔は尿道からカテーテルを膀胱に入れて採尿測定していましたが今はお腹の上から超音波で診るだけで残尿量が簡単に概算できます。

・『オシッコが出にくいんだけど』
 これも、「過活動膀胱」や「心因性」による頻尿の結果1回尿量が少ないために出にくいと思われている方と、膀胱収縮力が低下していたり尿道括約筋の開き方が不十分でその結果残尿が多量になっている方がおられ、それぞれの薬が上記のように全く違いますのでまず残尿測定が重要となります。

・『前立腺肥大症をほっといたら前立腺癌になるの?』
これも外来診療中よく患者さんから尋ねられます。どちらも中高年から年齢とともに発生頻度が上がっていく男性の病気ですが、結論からいうと「全く別の病気」です。前立腺の中での発生部位も異なりますし、前立腺肥大症は良性腫瘍・前立腺癌は悪性腫瘍です。
前立腺肥大症は、いくら肥大が大きくなっても、残尿(これは超音波検査ですぐわかります)がなく頻尿も気にならずスムースに排尿が出来ていれば、極端な話、治療の必要はありません。残尿感・頻尿・排尿困難を感じてきたらそろそろ治療のタイミングの目安と考えて下さい。
しかし、前立腺癌は無症状のうちに進行する事もよくあります。したがって男性の皆さんは、「オシッコの症状の有る無しに関係なく」50歳代は数年に1回、60歳以降は毎年1回PSA血液検査を受けられる事をおすすめします.

最後になりますが
・『調子悪かったけど泌尿器科を受診するのが恥ずかしくてなかなか来れませんでした』
これは特に女性の方からよくお聞きしますが、診察の基本は、問診・尿検査・残尿測定から始まり、御本人への説明・了承後必要に応じて超音波検査・レントゲン検査・内視鏡検査etc.へとひろがっていきます。

排尿に関して気になる症状を自覚した時は、我慢せず早期に泌尿器科を受診して下さい。


投稿
友岡泌尿器科医院 院長 友岡義夫