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健康コラム

2017年3月 1日 水曜日

巻き爪のおはなし

まき爪って何?
巻き爪とは、爪の両端の先端が強く内側に彎曲する状態を言います。負担のかかりやすい足の親指に多く起こり、爪が肉に当たることで痛みを引き起こしたり、進行すると周りの肉が盛り上がって出血を起こしたり、変形した爪に巻き込まれた皮膚が化膿することもあります。陥入爪は10人に1人が経験すると言われるほど多い病気ですが、軽く考えて治療せずにいると、痛む足をかばって歩くために、ひざ痛、腰痛の原因になることもあるので早期の治療が必要です。
巻き爪で痛みが生じると、ほとんどの人が爪を深く切り込んで痛みを取ろうとします。しかし、深爪をすると一時的に痛みは楽になるのですが、再び爪が伸びて来ると爪の周りの肉が盛り上がり、さらに爪を両サイドから圧迫するので爪の巻き込む変形がひどくなります。爪が皮膚に食い込むと痛みが増し、また深爪をする。巻き爪は悪循環を繰り返してドンドン悪化していく病気なので、自己判断での深爪は厳禁!です。

まき爪にはどんなタイプがあるの?
巻き爪には①陥入爪(かんにゅうそう)②弯曲爪(わんきょくそう)③爪甲鈎弯症(そうこうこうわんしょう)という3種類のタイプがあります。
一番多いのは、爪が周囲の皮膚に食い込んで痛みを起こす「陥入爪」。これがひどくなったのが「弯曲爪」。ちょうど使用前のホチキスの針の状態が「陥入爪」。爪の両側がさらに内側に巻き込んで皮膚を挟み込むようにして「のの字」型に巻き込んだもの、ホチキスの針が使った後に折れ曲がった状態が「彎曲爪」と思えばイメージしやすいと思います。
最後の「爪甲鈎弯症」は年配の方に多く見られ、しばしば水虫と間違えられる病気です。
爪が前に伸びずに上に盛り上がって、爪が異常に厚くなり、進行するとツノのように盛り上がってしまう状態です。これは他の2つと異なりあまり痛みを伴いません。



何が原因?何に気を付けたら良い?
≪靴に注意≫
巻き爪を防ぐための最も重要なポイントは「足に合った正しいサイズの靴を履くこと」です。
足に合わない小さなサイズはもちろんダメですが、大きすぎるサイズの靴も巻き爪の原因になります。大きい靴の中では足が前に滑ってしまい、指が靴に当たって巻き爪を引き起こす原因となります。一般的に、靴の中でのつま先の余裕は5~10mmが最適と言われています。またヒールの高い靴、先の細くとがった靴も、足先に体重がかかり、爪が圧迫される事で巻き爪の原因となるので注意が必要です。どうしても履かなければいけない方は必要最低限の着用に留め、長時間の着用は避けて下さい。靴は「土踏まず」がきちんとフィットして足が前にずれず、歩いているときにも足の指が動かせる余裕が有ることを確認して選びましょう。出来れば足の甲にベルトが有るタイプや紐靴を選び、足が前に滑らないように靴紐やベルトで足をきっちり固定することが大切です。
≪正しい爪切りを心掛ける≫
間違った爪切りが巻き爪の発症のきっかけになる事が多く、特に爪の端を切り込む深爪は厳禁です。
正しい爪切りは、爪の先端が約1mm残るくらいにして、両端を四角く切る「スクエアカット」が基本です。
一度切り込んでしまうと、伸びるまでに時間がかかり、症状が悪化する事が多くなります。日ごろから爪の端を内側に切り込まないように注意して下さい。







<<スポーツも要注意>>
足の指に力の入るサッカーやジョギング、テニス、卓球、ダンス、バスケなどのスポーツをしている人にまき爪はよく起こります。足の指や爪に激しい負荷がかかると、爪の側面に炎症が起こって周辺の肉が盛り上がっていきます。周りの肉が盛り上がると両端から爪を圧迫して爪が巻きはじめます。スポーツだけでなく、爪をぶつけたり、足の指の外傷も、同じ理由から巻き爪の原因になる可能性があります。
  スポーツをするときは、しっかり足にあったシューズを選んで使用するように心がけて下さい。
<<遺伝が原因?>>
生まれつきの骨の形や爪の形状が原因で巻き爪が起こることがあります。「親も巻き爪で困っていた」と言う方は他の人よりリスクが高いので、発症しないように靴選びや爪の切り方を注意しておく方が良いでしょう。また、爪が薄くて柔らかい方も、巻き爪になりやすいようです。爪が薄く割れやすい人は、爪のコーティング剤などを使用して爪を厚くすることで、外力による変形から爪を守るのもお勧めです。
<<老化>>
    爪は老化すると少しずつ厚くなっていきます。また肌が乾燥するように爪も乾燥して硬くなり、縮んで小さくなっていきます。さらに年をとっていくと、あまり歩かなくなるので下から爪を押し上げる力が働かなくなる為に、爪は巻きやすくなります。予防には普段から爪までクリームを塗るなど保湿をする事と、適度なウォーキングが大切です。

<<爪水虫>>
    爪に水虫菌が入ると、爪が厚くなり変形して巻き爪になる事があります。この場合は水虫の治療が最優先になるので、爪が白く変色して厚くなっている場合には、まず皮膚科などで水虫の治療を受けてください。

<<その他>>
爪甲鈎弯症の場合、多くの場合の原因は不明ですが、甲状腺機能低下症などの内分泌障害なども原因となる事があります。


巻き爪(陥入爪・彎曲爪)の治療法は?
巻き爪の治療法には、「手術療法」と「保存療法」の2種類があります。

≪手術療法≫
手術療法は、「巻き爪を治すためには変形した爪を作っている部分(爪母)をなくしてしまえば、変形した爪は生えてこない」という考え方に基づいて行われる治療です。
日本での代表的な治療は、内側に巻き込んだ部分の爪と爪床と爪母をすべて切り取る方法と、巻き込んだ部分の爪のみを切除し、不要な範囲の爪床や爪母をフェノールという薬品で固めて爪を生えて来なくする方法の2つです。
爪を切除する方法は術後の痛みが強いのが欠点ですが、完治率が高いので手術治療のほとんどはこの治療が行われます。薬品を使う方法は術後の痛みは軽いのですが、再発が起こりやすいデメリットがあります。どちらにしても術後はしばらく激しい運動や入浴を控える事が必要です。しかし巻き爪のクセを治す「矯正療法」と言われる保存療法と比較すれば、手術療法は①短期間で治療が終わる。②再発が少ないという点では優れています。デメリットは、いずれの方法も不十分な切除では再発することもあり、術後に爪の幅が狭くなったり、爪が変形する事もあります。
  
≪保存療法≫
保存療法には「テーピング」「コットンパッキング」と、ワイヤーやプレートによる「矯正療法」、痛みを緩和する「ガター法」があります。代表的な方法を簡単に説明してみましょう。

 コットンパッキング
ごく軽度の巻き爪であれば、巻き爪を起こした爪の下に小さな綿花を挟み込みます。これだけでも、ある程度の痛みは緩和されます。但し、あまり深爪にしている場合は綿花が挟み込めないので、先の白い部分が1mm程度伸びている場合に使う方法で、先の細いピンセットなどがあれば家庭でも簡単に行えます。使用するのは普通の綿花でも構いませんが、最近では専用のコットンも発売されています。

 ワイヤー・プレート矯正
形状記憶合金のワイヤーやプレートの「曲げてもまっすぐに戻ろうとする力」を利用して、巻き込んだ爪をまっすぐに矯正する治療法です。矯正の治療は手術と違って全く痛みが無いのが特徴です。装着した当日か翌日から入浴も可能となります。その他の日常生活での制限もほとんどありません。直線のワイヤーを伸ばした爪の先端の白い部分に2か所の穴を開けて形状記憶合金のワイヤーを通す方法や、爪の両端にフック状のワイヤーを引っかけて左右のワイヤーを中心で締め上げる方法、爪の表面に薄い板を張り付ける方法などがあります。これらの方法は少しずつ矯正していく治療法ですので、1度の治療で良くなる事はなく4~8週ごとにワイヤーなどの入れ替えや掛け替えが必要になります。また、爪の変形の度合いによっては、完治するまでに数か月~1年程度の時間が必要になることがあります。矯正力はワイヤーの方が強いので、プレートを使った矯正は、ワイヤーでは爪が割れてしまうなど基本的にワイヤーが使用できないときに限られます。矯正治療は簡単でほとんどの巻き爪に対応可能ですが重症な場合は手術が必要となります。しかし簡単で負担の少ない治療法なので、近年では巻き爪になったら、まずはこの矯正治療を受けることが勧められています。ただし、ワイヤーやプレートなどを使った矯正は健康保険の適応がなく自費治療になる事が多いので、まずは専門医の診察を受けて自分に合った治療法をご相談ください。
    また最近では病院の治療でなくても、自分で付け外しが出来る簡単な爪の矯正装具も色々発売されています。
軽症の場合は装具をうまく活用して、普段から自分で矯正をすることもお勧めです。

 アクリルガター法
痛みが大変に強い時には、肉に食い込んでいる爪と肉の間に、細いビニールチューブを挟んで痛みを
緩和させる方法です。ただし根治手術ではないので、痛みが落ちつけば他の治療を行う必要があります。

巻き爪(爪甲鈎弯症)の治療法は?
残念なことに他の2つのタイプと違って、これには有効な治療法はなく、ヤスリなどで爪を削ってい
く方法しかありません。「自分では難しくて出来ない!爪が硬くて切れない!」などでお困りの場合には、歯を削るような専用の器具やニッパー型の爪切りなどで処置をしてもらえる事が多いので外科や皮膚科にご相談下さい。

まとめ
   巻き爪はありふれた病気ですが、放っておいて重症になると大変なことになります。早めの治療が大切です。
自己判断で治そうとせず、軽症のうちに外科、皮膚科、形成外科などでご相談下さい。
                        
投稿
小林皮膚科医院 渡辺雅子

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