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健康コラム

2019年6月22日 土曜日

釣り針が刺さってしまったらのおはなし

暖かくなってくると山や海にとレジャーに出掛けたくなってきます。山よりも海に行きたいと思う方が約5倍も多いそうです。さて出掛ける方が多ければ事故や怪我も増えてしまいます。その中で大事故と言うほどではないのですが、釣りの最中に釣り針が刺さって取れないという患者さんが時々やって来ます。平日の病院が開いている時間帯に釣りに行ける方は少ないので、ほとんどが休日・時間外にやって来ます。思わぬ所に刺さっているもので、指先は勿論、頭、鼻、上瞼、背中、お尻、足など様々な所、はたまた隣で釣りをしていた人まで釣って、ひたすら謝りながらやって来られる方もいます。
釣り針の先端にはもどし(かえし、バーブ)という逆向きにとがった部分があり、餌が外れないように、釣った魚が外れないような役目をしています。
このもどしがあるために、人の皮膚に刺さった場合に取れなくなり、やっかいな事になります。最近更にやっかいなのは、皆さんお持ちのスマホで検索すると色々な対処法が出てきますし、ご親切に動画でも観ることが出来ます。これを参考にご自分で試したり、経験のある釣り仲間があれやこれやとアドバイスしてくれるようです。釣りをされる方は手先が器用な方が多いので、上手に抜けた方は病院に来ないのでしょうが、中途半端なことをして皮下組織を損傷し、腫れ上がって血まみれでやって来られる方もおられます。ネットで検索すると、簡単に抜けますと紹介されている方法の一つにミシガン州立医大の先生方が米国家庭医学会で発表したstring-yank-technique(糸で引っ張る方法)という方法があります。刺さった釣り針の弯曲部に糸を結び、チモトの部分を押さえながら逆方向に一気に糸を引っ張ると、簡単に抜けると説明されています。ただ工夫好きの日本人は、獲物によって様々な釣り針を使い分けるため釣り針の形状、もどしの数や形状、刺さった場所、刺さり方等の要因で、ネットで紹介されているほど簡単には抜けません。
色々な事を試しても抜けなくて、ようやく病院にやって来られます。
このような方に対して、一般的には局所麻酔をし、advance and cut techniqueと言う方法を用いペンチで釣り針を把持し、もどしの部分が皮膚から出るまで先に進め、出てきた釣り針の先端をもどしも含めペンチでカットして釣り針を戻して抜きます。
その後傷口を充分に洗浄・消毒し、必要に応じて抗生物質、抗炎症剤を投与します。傷の汚染の程度によっては破傷風トキソイドが必要な場合もあります。
というわけで、釣りをする際、釣り針は危険な物であると言う認識を持ち、特に投げるとき周囲に細心の注意を払いましょう。もしそれでも不幸にして釣り針が刺さってしまったら、ネット情報を鵜呑みにして自分で何とかしようという気持ちは抑え、水道水やペットボトルの水で洗浄し、出来れば刺さっている釣り針と同じ物を持参して(抜くときに大変参考になります)、速やかに病院に行くことをお勧めします。

投稿
吉川クリニック 院長 吉川 均

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