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緊急災害時・重症感染症流行時の対応

1.災害医療について 2.感染症流行時の対策

1.災害医療について

平成7年に私たちは阪神淡路大震災を経験し、災害についてはいろいろ準備してきたつもりです。でも平成23年3月11日、あの未曾有の大災害が起こりました。それによって、私たちは災害対策について考え直さなくてはならなくなりました。災害時に最も必要なもののひとつとして、医療があります。一度に大量に生じる人的被害、これには平常時の医療とは違ったやり方で臨まなくてはなりません。

災害医療の特徴

災害時には
1)一度に大量の受傷者が生じる。
2)医療機関の機能が損なわれることがある。
3)交通手段や通信手段が途絶えることがある。


災害医療はこれらに対処していかなくてはいけないのですが、まず最初に必要なことは、「傷病者の重症度に応じて治療の優先順位を決定する」ことです。その作業がトリアージと呼ばれるものです。その方法は、図のようなトリアージ・タグといわれるカードを手首などに輪ゴムで取り付け、重症度に応じて色の部分をちぎります。

トリアージ

そして治療の優先順位は次のようになります。

優先順位 タグの色 受傷者の状態
第1順位 赤(赤から下をちぎる) 救命するために一刻を争う状態
第2順位 黄(黄から下をちぎる) 放置すると危険だが急を要しないもの
第3順位 緑(何もちぎらない) 軽傷
第4順位 黒(黒から下をちぎる) 死亡もしくは救命不可能な状態

このトリアージを誰がするか。それは医師であり、訓練を受けた看護師や救急隊員です。
「生きていても助かる見込み無い人は見捨てられるのか?」といった疑問をはさみたくなる方もおられるでしょう。しかし、できるだけ多くの人の命を救おうという災害医療においては、やむをえない場合もあるのです。

次に必要なことは、どの医療機関へ運べばよいかという情報です。時々刻々変化する状況に対応するためには、その地域だけでなく、広域の情報が必要です。また患者さんを適切に運ぶには消防署の救急隊や自衛隊の助けが不可欠です。

このように、災害時の医療においては医療関係者・行政・消防署などの間に緊密な連携が必要で、それがうまくいくためには平常時から連携を築いておかなくてはなりません。須磨区医師会の役目としては

1) 受傷者の状況を医師会を通じて各方面に伝える。
2) 搬送可能な医療機関の情報を医師会からうけ、救助隊等に知らせる。
3) 医療救護班が到着する前に可能な範囲で早期の治療を行う。


災害の規模が大きいときは、3)よりも1)や2)が役割の中心となります。

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2.感染症流行時の対策

2.感染症流行時の対策

ひとたびあるところで感染症が発生すると、それは瞬く間に世界に広がってゆきます。たとえば、2009年には新型インフルエンザが猛威をふるいました。国内では神戸から一人目の患者がみつかりましたが、あっという間に日本全国に広がったのです。これを教訓に、神戸市では医師会と行政が一体となって、予防体制を築いております。ここでは、主にインフルエンザ対策を中心に説明しますが、その他の感染症にも応用がきくものです。

2-1 症状の強さと感染力の強さ

インフルエンザのような流行性感染の対策を決める場合、注目するのは症状の強さと感染力の強さです。
症状の強さを表すのに良く用いられるのが致死率、すなわちその病気にかかったとき何パーセントの人が亡くなるか、という値です。2%以上が高病原性とされています。

1918年に流行したスペインかぜは、致死率2%で世界中で4000万人が亡くなったとされています。一方、2009年の新型インフルエンザは感染性は強かったのですが、致死率は0.001% と弱毒性でした。
しかし、新型のインフルエンザの場合、罹患率は約25%と想定されていますから神戸市内では20万人の人が感染し、もし高病原性であれば4000人の人が亡くなったわけですから、大変なことです。
一方、鳥インフルエンザは致死率が60~70%と恐ろしく高いものですが、今のところ鳥から人への感染力は弱く、人への感染例は少ないのです。ただ、ウィルスが変異して人への感染力が強くなったら、それこそ人類の危機です。

2-2 流行の時期に応じた対策(特に、海外発生インフルエンザについて)

世界的に流行している感染症は流行の時期によって対処法が異なります。次に、インフルエンザの場合について要点を示します。

インフルエンザの場合について要点

発生段階は政府からアナウンスされますが、国内でも地域によって発生にずれがあるので、県単位でも判断されます。しかし、神戸は政令指定都市であり、兵庫県全体とはまた異なりますので、神戸市と神戸市医師会が連携して対策を行う必要があります。須磨区医師会でもこれを受けて、対策を実施してまいります。

次に示すのは神戸市医師会で策定された新型インフルエンザに対する医療体制(案)です。

医療体制(案)

高病原性あるいは病原性が不明な間は前例措置入院病原性が低い事が明らかになる、あるいは入院病床が不足した時点から重症者のみを入院とする。

医療体制(案)  <地域発生期>

図を見てもちょっと複雑で良くわからないという方もおられるでしょう。
でもインフルエンザかなと思ったら、まずコールセンターに電話するだけでいいのです。コールセンターの情報は様々な方法で皆様に行き渡ると思います。そして、まずは手洗い・うがい・マスク着用 などの基本的な準備をしながら、慌てず対処することが大切です。

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高齢者虐待防止のための対応について

1.法律の施行について

平成 18 年4 月1 日より「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行された。同法では、高齢者虐待の定義、発見者の通報義務等について定めており、主な内容は以下のとおりである。

(1)高齢者虐待の定義

1 高齢者の定義 「高齢者」とは、「65歳以上」の者
2 高齢者虐待の定義
「家庭における養護者」又は「施設等の職員」による次に掲げる類型の虐待

身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること
介護・世話の
放棄・放任
高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること
心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること
経済的虐待 養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること
(2)通報義務について

<関係機関に対する義務>
病院・養介護施設・保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体、および医師・養介護施設従事者等・保健師・弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者に対して、高齢者虐待を早期に発見する努力義務が課せられている。

<市民に対する義務>
◆家庭における養護者による高齢者虐待の場合
家庭における養護者による高齢者虐待を発見した者に対して、
①高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合 ⇒ 神戸市への通報義務
②それ以外の場合 ⇒ 神戸市への通報の努力義務
◆介護従事者による高齢者虐待の場合
①介護従事者が、自分が働いている施設等で従事者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合 ⇒神戸市への通報義務
②施設等職員による虐待を発見した者(①以外の場合)に対しては、
ア.高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合 ⇒神戸市への通報義務
イ.それ以外の場合 ⇒神戸市への通報の努力義務

2.介護従事者による高齢者虐待

高齢者虐待防止法では、家族等による虐待にあわせて高齢者の福祉・介護サービス業務に従事する者(介護従事者)による高齢者虐待の防止について規定されている。
介護従事者による虐待はその職業倫理に照らしても許されるものではなく、被害を訴えることの出来ない認知症高齢者が虐待の被害者となりやすいことに加え、施設等のような相互の監視が可能な場所であるにもかかわらず発生しうるという点でも、加害者単独の問題にとどまらない深刻な問題である。
高齢者の心身の安全と尊厳を保護し、介護従事者が非意図的に加害者となる事態を未然に防ぐため、事業者として適切な予防措置に継続的に取組み、すべての介護従事者が高齢者虐待に関する正確な認識を持つことが求められる。

(1)介護従事者の範囲

高齢者虐待防止法に規定される『養介護施設従事者等』(以下、介護従事者という)=介護保険施設等の入所施設や居宅サービス事業者など、老人福祉法や介護保険法で規定されている高齢者向け福祉・介護サービスに従事する職員すべてが対象となる。

※高齢者虐待防止法に規定される『養介護施設等』の範囲

  養介護施設 養介護事業
老人福祉法による規定 ・老人福祉施設
・有料老人ホーム
・老人居宅生活支援事業
介護保険法による規定 ・介護老人福祉施設(地域密着型含)
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設
・地域包括支援センター
・居宅(介護予防)サービス事業
・地域密着型(介護予防)サービス事業
・居宅介護支援事業
・介護予防支援事業
(2)関係者に課せられている義務(※「通報」=神戸市への通報)
関係者 義務 高齢者虐待防止法条文
施設長・管理者等
(「養介護施設の設置者又は
養介護事業を行う者」)
・介護従事者への研修(全職員対象)
・苦情処理体制の整備等
他、高齢者虐待防止に資する対応
介護従事者による高齢
者虐待予防の措置
(第20 条)
介護従事者 ・通報義務※(介護従事者から虐待を受
けたと思われる高齢者を発見した場
合、速やかに通報)
市への通報義務
(第21 条)
介護従事者以外の者 ・ 通報努力義務※(虐待を受けたと思
われる高齢者を発見した場合)
・ 通報義務※(上記高齢者に生命又は
重大な危険が生じている場合)
市への通報義務
(第21 条)
神戸市 ・ 市における対応・相談窓口の周知
・ 事実確認、立ち入り調査等
・ 被虐待高齢者の保護
・ 改善指導等
老人福祉法又は介護保
険法の規定による権限
の適切な行使(第24条)
(3)通報者保護に関する規定
  • 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は高齢者虐待に関する通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く)をすることを妨げるものと解釈してはならない。(高齢者虐待防止法第21 条第6 項)
  • 介護従事者は通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いを受けない。
    (高齢者虐待防止法第21 条第7 項、公益通報者保護法)
  • 神戸市の職員は通報又は届出をしたものを特定させるものを漏らしてはならない。
    (高齢者虐待防止法第23 条)
(4)市内における主な事例
  • 事業者側に「(乱暴な扱いをしても)故意ではないから虐待ではない」という認識がある。
  • 業所において虐待に関する職員研修を行ったことがない。または一部職員のみ受講し他の職員が基本的な知識を得る機会を設けていない。
  • 虐待を受けた高齢者や、虐待を受けたと思われる高齢者を発見した家族・介護従事者等が、事業所への気兼ねから通報を控えがちである。
  • 虐待が疑われる事例が発生した際、家族からの根拠のない苦情と捉えたり、風評被害を恐れ、虐待としての対応(通報、内部調査等)をおこなわない。
(5)事業所としての取り組み
1.高齢者虐待防止に関する事項の周知徹底
①介護従事者・職員全員に対し、高齢者虐待防止に関する事項(虐待の定義、具体的な行為例、関係者に課せられた義務等)について、早急に所内研修等の確実な方法により周知徹底すること。
②新規採用者への周知方法、年間の研修計画など継続的に周知徹底する方策を事業所として規定すること。
2.苦情処理体制の整備と周知徹底状況の確認
利用者や家族に対する苦情処理体制の周知徹底状況の確認(重要事項説明書による説明、事業所内の掲示、利用者や家族の認識の有無)。
3.虐待が疑われる事例が発生した場合の対応
①被虐待者とされる高齢者の心身状況の確認、保護、記録
・心身の状態の確認(介護記録、医療受診結果の記録、可能であれば本人に必要性を説明し同意を得た上で怪我等の状況写真を残す)
・重度の認知症であっても、聴き取りを行い詳細を記録
・適切な対応(医療受診、虐待者からの保護)
②神戸市への報告
発生と同時に速やかに事故報告の様式によって報告を行う

3.神戸市の相談・通報窓口

【養護者による虐待】
各あんしんすこやかセンター
【養介護施設従事者による虐待】
神戸市高齢福祉課調整指導係 直通
TEL.322-6326
FAX.322-6046

高齢者虐待防止法について

定義(法第2条)
<高齢者とは>65歳以上の人
< 誰が>
①養護者= 高齢者を養護(介護・世話)している家族、親族、同居人等
②要介護施設従事者等= 老人福祉法及び介護保険法で規定された
施設・事業所の業務に従事する人

高齢者虐待の例
区分 内容と具体例
身体的虐待 暴力的行為などで、身体にあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為。
【具体的な例】
・平手打ちをする、つねる、殴る、蹴る、無理矢理食事を口に入れる、やけど・打撲させる
・ベッドに縛り付けたり、意図的に薬を過剰に服用させたりして、身体拘束、抑制をする/等
介護・世話の
放棄・放任
(ネグレクト)
意図的であるか、結果的であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている家族が、その提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や、高齢者自身の身体・精神的状態を悪化させていること。
【具体的な例】
・入浴しておらず異臭がする、髪が伸び放題だったり、皮膚が汚れている
・水分や食事を十分に与えられていないことで、空腹状態が長時間にわたって続いたり、脱水症状や栄養失調の状態にある
・室内にごみを放置するなど、劣悪な住環境の中で生活させる
・高齢者本人が必要とする介護・医療サービスを、相応の理由なく制限したり使わせない
・同居人による高齢者虐待と同様の行為を放置すること/等
心理的虐待 脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的、情緒的苦痛を与えること。
【具体的な例】
・排泄の失敗を嘲笑したり、それを人前で話すなどにより高齢者に恥をかかせる
・怒鳴る、ののしる、悪口を言う
・侮辱を込めて、子供のように扱う
・高齢者が話しかけているのを意図的に無視する/等
性的虐待 本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要。
【具体的な例】
・排泄の失敗に対して懲罰的に下半身を裸にして放置する
・キス、性器への接触、セックスを強要する/等
経済的虐待 本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由無く制限すること。
【具体的な例】
・日常生活に必要な金銭を渡さない/使わせない
・本人の自宅等を本人に無断で売却する
・年金や預貯金を本人の意思・利益に反して使用する/等